パッシブデザイン という設計手法について
今回も前回に引き続き、野池政宏先生からのパッシブデザイン住宅のお話をします!徳永です。
「パッシブデザインが目指す室内環境とそれに関わる要素」
パッシブデザインは高い質の室内環境を目指す設計手法です。
ただ室内環境という概念は広く、ここでパッシブデザインが対象とするものを明確にしておきます。
「冬暖かく、夏涼しく、明るさが適切」
このうち「冬暖かく、夏涼しく」は「熱環境(温熱環境)」という言葉で表現される内容であり、
「明るさが適切」のほうはもちろん「光環境です」つまりパッシブデザインが目指すものを言い換えれば
【質の高い熱環境と光環境の実現】となるわけです。
さらに熱環境を規定する要素には「温度、湿度、気流(風)」があり、熱、湿気(水蒸気)、気流の
動きを適切にとらえて、快適で健康的な室内環境をつくり出そうとします。
これはいわゆる「建築環境工学」で議論される一般論と同じですが、
パッシブデザインはこの実現に太陽、風、(地熱)を活用・調節することが特徴的です。
パッシブデザインは最終的に“かたち”で表現されるわけですが、
優れたパッシブデザインの家“かたち”を真似してもうまくいくとは限りません。与条件が違うからです。
設計者は“かたち”が好きなのでどうしてもそれに影響を受けがちですし、
パッシブデザインを【特徴ある“かたち”の集合体】であると認識してしまう傾向にあります。
熱環境や光環境に対する基本的な理解が進むほどパッシブデザインに成功する確率は、
間違いなく高くなります。参考になる住宅をたくさん見ることと並行して、こうした理科的な勉強も進めています。
「躯体(動かないもの)と窓(動くもの)」
建物を「窓という穴が開いている箱」としてみた時、
窓以外の部分(躯体)の性質や機能を変化させることはできません。
例えば断熱性能(熱貫流率)が決まれば、冬にどれくらい熱が逃げて、
夏にどれくらい熱が入ってくるかは決まることになります。
また躯体はパッシブデザインにおいて意識する「熱、光、風」のうち、熱しかそこを移動しません。
建物内外の熱移動のありかたはパッシブデザインにおいて
もっとも基本的で重要な事柄であり、その意味で躯体の設計は極めて重要ですが、
パッシブデザインの特徴である「自然エネルギーを活用・調節する」
というところの、とくに「調節する」という機能を躯体に持たせることはできないわけです。
一方、窓はその性質や機能を変化させることができます。
しかも「熱、光、風」のすべてが窓を通過します。さらには躯体に比べて断熱性能が低く、
とくに冬において熱損失が多くなる場所です。したがって、窓をどのように設計するかは
パッシブデザインにおいて極めて重要であり“肝”になるところだと言えます。
躯体はその建物の基本性能(ポテンシャル)を決め、窓はそこからの対応力(振幅)を決めるという位置づけになるわけです。
こうしたイメージを持ってパッシブデザインに向かっていきます。